筋膜性疼痛症候群(MPS) 研究会では2017年6月24日土曜日、25日日曜日に東京高田馬場にて第19回 学術集会を開催しました。
今回の学術集会は、メインテーマを『上肢痛の“発痛源評価の標準化”と治療技術交流による多職種連携を目指して』として開催されました。
一日目の司会は今回の学術集会世話人の銭田治療院千種駅前 銭田良博 先生(理学療法士,鍼灸師)となります。
初日の最初のセッションは横浜市立大学整形外科 宮武和馬先生の基調講演となります。
この基調講演は「肩肘関節傷害の発痛源の診断と治療ー基礎から動的診断,Hydro-Releaseまで」と題して、肩関節痛を例にとり発痛源の診断手法から治療方法まで解説された非常に興味深い講演がありました。
続く基調講演の第二弾は神戸大学大学院保健学研究科生体構造学分野准教授 荒川高光先生 (医学博士・理学療法士)による講演です。
この講演では「Fasciaに関する最新の解剖学的エビデンスについて」と題して、解剖学の観点でFasciaとはなにか? 実際に解剖学実習の遺体でFasciaの状態はどのようになっているのか?全身の筋ごとの違いなど普段の臨床では得ることが難しい知識を習得することができました。
二日目の司会は今回の学術集会副世話人のみね鍼灸院 峰 真人 先生(鍼灸師)となります。
二日目最初のセッションは弘前大学医学部附属病院 総合診療部, 金沢大学機能解剖学分野 小林 只 先生から、2017年5月30日施行された改正個人情報保護法の解説がありました。
この中では、従来は5000件以上の個人情報を所有する者が対象だった法律が、1件以上の個人情報を所有する者が対象になり、大多数の当会会員も十分に考慮をすべき法律になった事などが紹介されました。
続いて以下2件の会員プレゼンテーションがありました。
最初の会員プレゼンテーションは、トリガーポイント治療院 院長 黒沢理人先生による「エコーで見る禁鍼穴の実際」です。
この発表の中では、東洋医学で言われている禁鍼穴への刺鍼について、最新のエコーや解剖図を用いて本当に危険があるのか?を考察した結果の発表がありました。
続く会員プレゼンテーションは、塩釜鍼灸治療室 院長 鳥居諭 先生による「膝痛のリリースについて」です。
この発表の中では、膝痛のメカニズムに対する考察や実際にリリースを行う器具「MYORUB」を用いて、膝痛の原因をリリースする実技などが紹介されました。
続いて以下3件の症例発表がありました。
最初の症例発表は、地域疼痛ケア協会 会長,エムツー訪問看護ステーション仙台長町 山崎瞬 先生による「触診 x ソマセプトミオ x イノベーション」です。
この発表の中では、痛みを感じている患者さん115名へ、身体診察を用いて発痛源を同定し皮膚刺激ツールであるソマセプトミオを用いて、その前後で痛みの感じ方や関節可動域などを調査した結果の発表などがありました。
続く症例発表は、木村ペインクリニック 鈴木 茂樹 先生による「凍結肩治療に対する医師との連携の実際」です。
この発表の中では、凍結肩の治療において拘縮の患部に対して、医師と連携して診断、fasciaリリース、神経ブロック、徒手療法を一連の流れで行うことにより痛みの改善に高い効果を示していることの発表がありました。
最後の症例発表は、木村ペインクリニック 院長 木村 裕明 先生による「凍結肩の治療」です。
この発表の中では、凍結肩の治療におけるエコーを用いたfasciaリリース、神経ブロックの手法について筋肉、神経の位置などを図示した解剖図などを用いて詳細の発表がありました。
二日目の最後のセッションは「上肢痛に対する発痛源評価(臨床的触診を含む)&エコー実技」となります
エコー勉強会の最初は、銭田治療院千種駅前銭田良博 先生(理学療法士,鍼灸師)による講義「上肢痛に対する発痛源評価、臨床的触診処置、エコー実技」です。
この講義の中では、実際に実技に入る前の座学として、MPS・fasciaなどの用語定義の解説、発痛源の評価方法、上肢の解剖学における解説等のあと、エコーが画像を用いて実際に観察をする講義が行われました。
今回の学術集会では、メインテーマ『上肢痛の“発痛源評価の標準化”と治療技術交流による多職種連携を目指して』の通り、下肢痛に着目した発痛源評価に関する標準化について、職種を越えて深い議論をすることができました。
今後も本研究会を通して、今回のようにより深い情報交換を行うことにより、筋膜性疼痛症候群(MPS)のより詳細な原因、症状、治療方法の研究に寄与してゆく所存です。
本学術集会の運営にご協力をいただいたMSKメディカルサポート株式会社様、東洋レヂン株式会社様、東芝メディカルシステムズ株式会社様、コニカミノルタ株式会社様、日本シグマックス株式会社様、セイリン株式会社様、地域疼痛ケア協会様を始めとする、全ての関係者の方々へ、この場を使い感謝の意を表させていただきます。
筋膜性疼痛症候群(MPS) 研究会では、今回のような学術集会を始めとする場で痛み、筋膜性疼痛症候群に対する理解を深め、治療技術の発展の為、ともに研究を行う治療者、研究者を募集しています。詳細は「入会について」を参照願います。