MPS研究会 第12回学術集会 報告

筋筋膜性疼痛症候群(MPS) 研究会では2013年11月16日 土曜日、17日 日曜日の両日、新大阪にて第12回 学術集会を開催しました。

11月16日 土曜日 エコー勉強会

運動器エコーとMPSの融合
六ケ所村尾駮診療所 金沢大学機能解剖学分野 小林 只 先生

六ケ所村尾駮診療所 金沢大学機能解剖学分野 小林 只 先生

六ケ所村尾駮診療所
金沢大学機能解剖学分野 小林 只 先生

最初のセクションはエコー勉強会です。エコー勉強会の前半は六ケ所村尾駮診療所 金沢大学機能解剖学分野 小林 只 先生によるプレゼンテーション「運動器エコーとMPSの融合」からスタートしました。

このプレゼンテーションでは実際にMPSの患部に対するエコー画像の紹介など、実技に必要な前提知識として運動器エコーとMPSの関係の説明がありました。

ライブデモ

ライブデモ

ライブデモ

続いて、木村裕明先生と小林只先生による運動器エコーのライブデモが行われました。

このライブデモでは実際に頚部に痛みを持つ被験者に対して運動器エコーを用いた際のプローブの当て方、その際のエコー画像を見ながら、患部の特定方法、状況の説明、さらには実際にトリガーポイントブロック注射やトリガーポイント鍼療法を施した際のエコー画像の変化などを観察しました。

ハンズオン

ハンズオン

ハンズオン

実技勉強会の最後のセッションは、3種類のエコー(Viamo™ 東芝、Noblus 日立アロカ、SeeMore メディコス・ヒラタ)を準備して、参加者が各エコーのコーナへ分かれて実際にエコーに触っていただくハンズオンです。

このハンズオンを通して、会員は運動器エコーをどのようにMPSの治療に役立たせる事ができるかを実感することができました。

開会の挨拶

治療指針の一般公開について 木村 裕明 会長

木村 裕明 会長

木村 裕明 会長

実技勉強会の後に木村裕明会長による開会の挨拶がありました。

この挨拶の中では、最近になって筋筋膜性疼痛症候群(MPS)の存在がメディア等により周知されてきて、会員数が急激に伸びている事、今までの筋筋膜性疼痛症候群(MPS)研究会の研究の成果をもとに、筋筋膜性疼痛症候群(MPS)に対する初の治療方針を一般公開した事なども発表されました。

会員プレゼンテーション

PTの視点から見た「慢性疼痛」 理学療法士 船越 議生 先生

理学療法士 船越 議生 先生

理学療法士 船越 議生 先生

一日目最初の会員プレゼンテーションは理学療法士 船越 議生 先生によるプレゼンテーション『PTの視点から見た「慢性疼痛」』です。

このプレゼンテーションの中では、理学療法士の慢性疼痛に対する認識の現状、治療内容についての説明があり。さらに、理学療法と筋筋膜性疼痛症候群(MPS)の融合について、実際に筋筋膜性疼痛症候群(MPS)の概念を元に理学療法を行った事例の発表がありました。

MPS治療と在宅医療 麻布ぼだい樹クリニック 院長 久田 義也 先生

麻布ぼだい樹クリニック 久田 義也 先生

麻布ぼだい樹クリニック 久田義也先生

続くプレゼンテーションは、麻布ぼだい樹クリニック 院長 久田 義也 先生による『MPS治療と在宅医療』です。

このプレゼンテーションの中では、久田先生が普段実践されている筋筋膜性疼痛症候群(MPS)に対する在宅治療についての症例が紹介されると共に、MPSの痛みで通院さえ困難な患者さんなどに対する在宅治療の効果の高さが紹介されました。

運動器慢性痛の発症と維持に影響を及ぼす様々な因子
愛知医科大学 学際的痛みセンター教授 牛田 享宏 先生

愛知医科大学 牛田 享宏 先生

愛知医科大学 牛田 享宏 先生

今回の特別講演は『運動器慢性痛の発症と維持に影響を及ぼす様々な因子』と題して、愛知医科大学 学際的痛みセンター教授 牛田 享宏 先生 より、ご講演をいただきました。

この講演では、慢性疼痛には局所要因のみならず社会的要因や心理的要因が重要であることを強調されました。また、不動がもたらす疼痛症状の悪化に関しても最新の研究データや厚生省の痛み研究班としての調査報告内容・展望などの紹介もありました。

質疑応答の様子

特別講演の様子

これらの内容は、当会の会員にとって非常に有用であり、多くの質疑応答が交わされました。

11月17日 日曜日 シンポジウム MPS治療のコツと工夫~難治症例中心に~

二日目は5人のシンポジストによるシンポジムを行いました。

線維筋痛症とアダルトチルドレン 加茂整形外科医院 院長 加茂淳 先生

加茂整形外科医院 加茂淳 先生

加茂整形外科医院 加茂淳 先生

シンポジム最初の発表は、加茂整形外科医院 院長・当会名誉会長 加茂淳 先生による『線維筋痛症とアダルトチルドレン』です。

この発表の中では、痛みの慢性化、広範囲化した患者さんの中にはアダルトチルドレン(機能不全家庭で育ったことにより、成人してもなお内心的なトラウマを持つ)が含まれており、このような患者さんの治療にはトラウマを如何に解くかが、MPS治療のキーポイントの一つになっている事が紹介されました。

医療行為によってもたらされる不安への対応 山下クリニック 院長 山下徳次郎 先生

山下クリニック 山下徳次郎 先生

山下クリニック 山下徳次郎 先生

続く発表は、山下クリニック 院長 山下徳次郎 先生による『医療行為によってもたらされる不安への対応』です。

この発表の中では、従来の整形外科的診断手法に基づく誤った診断や、難病と言われている線維筋痛症の診断が、患者を不安に陥れるとともに、安易な薬物療法などの不適切な治療により慢性痛が難治化する要因となることと、これらの問題点について如何に患者に説明したらいいかということについて説明がありました。

また、筋筋膜性疼痛症候群(MPS)の治療中に原因筋が入れ替わることが患者を不安にする要因となることを症例とともに示し、MPSの治療においては常にこの点に注意しておくことが大切であるという説明がありました。

MPS治療のコツと工夫 下腿部痛 木村ペインクリニック 院長 木村裕明 先生

木村ペインクリニック 木村裕明 先生

木村ペインクリニック 木村裕明 先生

続く発表は、木村ペインクリニック 院長・当会会長 木村裕明 先生による『MPS治療のコツと工夫 下腿部痛』です。

この発表の中では、トリガーポイント治療がうまくいかない場合の理由は、トリガーポイントの検索不足が多い事が説明されました。

また典型的な下腿部痛のトリガーポイントの位置の説明、見つけ方、エコーを使った注射液の広がり、骨膜注射の実施方法などの説明がありました。

TFCC損傷に対するTP鍼治療~難治性疾患の治療と工夫~ よしむら鍼灸治療院 院長 吉村 亮次 先生

よしむら鍼灸治療院 吉村 亮次 先生

よしむら鍼灸治療院 吉村 亮次 先生

続く発表は、よしむら鍼灸治療院 院長 吉村 亮次 先生による『TFCC損傷に対するTP鍼治療~難治性疾患の治療と工夫~』です。

この発表の中では、医療機関でTFCC(三角線維軟骨複合体)損傷と診断され治療を続けたものの症状が改善されない患者さんへ、吉村先生が実践されているMTP(森田式TP鍼療法)を用いて治療をした結果、痛みが改善した事例の紹介がありました。

局所療法の極地!局所麻酔下の掃骨療法を実践した経験
青森県六ケ所村国民健康保険尾駮診療所/金沢大学機能解剖学分野 小林只 先生

六ケ所村尾駮診療所/金沢大学機能解剖学分野 小林只 先生

六ケ所村尾駮診療所
金沢大学機能解剖学分野
小林只 先生

続く発表は青森県六ケ所村国民健康保険尾駮診療所/金沢大学機能解剖学分野 小林只 先生による『局所療法の極地!局所麻酔下の掃骨療法を実践した経験』です。

この発表の中では、実際の臨床治療の場で小林先生が普段から実践されている治療方法の紹介(注射、鍼、運動療法、薬物療法など)と、それらのメリット・デメリットを踏まえながら総合的かつ効果的に治療を行う為の実践方法の紹介がありました。

トリガーポイント鍼療法である掃骨療法は非常に治療効果が高いが、治療刺激自体が強くなる傾向にあり、また治療後のリバウンドも強いという課題を克服するために、①事前に局所麻酔薬の患部への注射(筋膜間注入法やエコーガイド下注射含め)を実施、②治療後に駆お血剤(治打撲一方、桂枝茯苓丸など)の併用、などの工夫が紹介されました。

総括

今回の学術集会では、筋筋膜性疼痛症候群(MPS)の研究、治療に関する事はもちろんの事、線維筋痛症まで幅を広げて、さまざまな議論、情報交換を行う事ができました。

今後も本研究会を通して、今回のようにより深い情報交換を行うことにより、筋筋膜性疼痛症候群(MPS)のより詳細な原因、症状、治療方法の研究に寄与してゆく所存です。

ご多忙の中ご講演をいただきました 愛知医科大学 学際的痛みセンター教授 牛田 享宏 先生、運営にご協力をいただいたビタカイン製薬様東芝メディカルシステムズ様ソニックジャパン様メディコスヒラタ様を始めとする、全ての関係者の方々へ、この場を使い感謝の意を表させていただきます。

筋筋膜性疼痛症候群(MPS) 研究会では、今回のような学術集会を始めとする場で痛み、筋筋膜性疼痛症候群に対する理解を深め、治療技術の発展の為、ともに研究を行う治療者、研究者を募集しています。詳細は入会についてを参照願います。

なお、本学術集会の内容は、会員は会員コミュニティページより動画で視聴できます。