MPS研究会 第14回学術集会 報告

筋筋膜性疼痛症候群(MPS) 研究会では2014年11月8日 土曜日、9日 日曜日の両日、新大阪にて第14回 学術集会を開催しました。

今回の学術集会では、メインテーマを『動作分析による罹患筋診断 その2』として、6月に開催された第13回 学術集会と同様に罹患筋を迅速かつ正確に診断できるようにする事で、日常診療に必ず役立たせる事を目的としました。

世話人 増田医院 増田和人 院長

世話人 増田医院
増田和人 院長

開会の挨拶 木村ペインクリニック 木村裕明 院長

開会の挨拶 木村ペインクリニック
木村裕明 院長

11月8日 土曜日 医療機器・器具紹介

MPS研究会会員・東洋レヂン株式会社 深澤 聡 様

MPS研究会会員・東洋レヂン株式会社 深澤 聡 様

MPS研究会会員・東洋レヂン株式会社
深澤 聡 様

最初のセクションは医療機器・器具紹介です。

最初の医療機器・器具紹介はMPS研究会会員、東洋レヂン株式会社 深澤 聡 様から、皮膚科学・神経伝達を応用した開発製品でマイクロコーンによる皮膚刺激で痛みを緩和する医療機器ソマセプトmyoの紹介がありました。

愛知電子工業株式会社 北川 治 様

愛知電子工業株式会社 北川 治 様

愛知電子工業株式会社 北川 治 様

二つ目の医療機器・器具紹介は愛知電子工業株式会社 北川 治 様からありました。

愛知電子工業様では、微弱電流治療器 ソーダマインを初めとする自己治癒力を高める事を目的として開発をされた各種医療機器、筋膜リリース器具 MYORUBの前処理に用いると効果の高いイリスエスリークなど健康グッズの紹介がありました。

また、当研究会やトリガーポイントについて認知度を高めるなど、慢性患者を減らす活動の案内がありました。

MPS治療指針の総括 – 弘前大学医学部附属病院 総合診療部, 金沢大学機能解剖学分野 小林 只 先生

弘前大学医学部附属病院 総合診療部, 金沢大学機能解剖学分野 小林 只 先生

弘前大学医学部附属病院 総合診療部
金沢大学機能解剖学分野 小林 只 先生

続きまして、弘前大学医学部附属病院 総合診療部, 金沢大学機能解剖学分野 小林 只 先生からMPS治療指針の総括がありました。2013年11月に一般公開した「MPS治療指針(総論)」の内容および最近の研究・臨床動向の基本概念を概説しました。

これは当会会員数の増加、議論・研究をしている内容の高度化に伴い、改めてMPSの背景、治療に対する基本的な考え方などの説明と総括を行ったものです。

会員プレゼンテーション

筋力低下をともなった腰下肢痛の一症例について考える – 江原鍼灸院整骨院. 江原 吉昭 院長

江原鍼灸院整骨院. 江原 吉昭 院長

江原鍼灸院整骨院.
江原 吉昭 院長

1日目の会員プレゼンテーションは、 江原鍼灸院整骨院. 江原 吉昭 院長によるプレゼンテーション『筋力低下をともなった腰下肢痛の一症例について考える』です。

このプレゼンテーションの中では、下肢痛を主訴として来院した患者さんが痛みは消失したが、筋力低下が残った事例の紹介がありました。

また、総括としてMPSという病態を熟知した各種分野の治療者による医療ネットワークの構築の重要性が説明されました。

エコー勉強会

エコー勉強会 概要 – 弘前大学 小林 只 先生

弘前大学 小林 只 先生

弘前大学 小林 只 先生

最初にエコー勉強会に開催にあたり、弘前大学 小林 只先生から超音波診断装置(エコー)を使った臨床マネジメントについての説明がありました。

この概要説明の中では、(1)リスクヘッジのための使用(肺の位置確認、気胸・血胸の除外、注射部位の神経・血管の位置確認など)と、(2)治療のための使用(針先・鍼先の確認、MPS病変部位の同定、治療効果の判定など)、(3)学習のための使用(解剖の確認など) などの有用性の提示がありました。

その結果として、如何に安全かつ的確にトリガーポイント注射・筋膜間注入法・筋膜リリース法・鍼治療を行う事ができるのか?など、これからの治療家にとってエコーは特殊な機械ではなく、1人1台の治療サポートツールになることが強調されました。

エコーガイド下筋膜リリース法 – 木村ペインクリニック 木村裕明 院長

木村ペインクリニック 木村裕明 院長

木村ペインクリニック
木村裕明 院長

続いて木村ペインクリニック 木村裕明 院長から、エコーを利用した治療の実例として『エコーガイド下筋膜リリース法』の発表がありました。

このプレゼンテーションの中で、エコーを用いて筋膜の重積部位を確認し、生理食塩水の注入によって筋膜がリリースされる様子が動画で紹介されました。

実習

プレゼンテーションの後はソニックジャパン株式会社様東芝メディカルシステムズ株式会社様のご協力のもと実習が行われました。

前半は、肺エコーを行いました。胸膜運動の確認による気胸の除外や、肺尖部・肺底部など治療家が普段気苦労している部位の確認が行われました。

後半は、自由実習を行いました。エコーを使用した実際の診察・治療の流れのデモンストレーションや、注射・鍼・徒手などの治療後の筋膜・軟部組織変化のエコーによる観察などが行われました。

実習

実習

実習

実習

筋筋膜疼痛症候群に対する臨床 トリガーポイント鍼治療 –
明治国際医療大学 准教授 伊藤和憲先生

明治国際医療大学 准教授 伊藤和憲先生

明治国際医療大学 准教授
伊藤和憲先生

今回の特別講演は『筋筋膜疼痛症候群に対する臨床 トリガーポイント鍼治療』と題して、明治国際医療大学 准教授 伊藤和憲先生 より、ご講演をいただきました。

伊藤先生はトリガーポイントの父、故Dr.Simonsとも面識があり、長年トリガーポイントや痛みのメカニズムについて研究をされております。

今回の特別講演ではトリガーポイントと体内の電気活動の関係、慢性疼痛が発生するメカニズムなど最新の研究状況についての説明をいただきました。

質疑応答の様子

特別講演の様子

また、特別講演の後半では実際に会員を被験者としてトリガーポイント鍼療法の施術が行われ、触診でトリガーポイントを見つける手法、実際に鍼施術を行う際の方法などの詳細の説明がありました。

本講演は、トリガーポイントに関する理論から実際の治療まで、非常に充実した内容になっており、特に初学者が治療技術を学ぶための工夫・戦略や、厚労省の線維筋痛症研究班班長として、「慢性疼痛患者に対する統合医療的セルフケアプログラムの構築」の成果のご紹介があり、非常に有益な特別講演でした。

11月9日 日曜日 会員プレゼンテーション

見逃がされがちな部位のトリガーポイント – 顎関節症クリニックやまだ歯科 山田 貴志 院長

顎関節症クリニックやまだ歯科 山田 貴志 院長

顎関節症クリニックやまだ歯科
山田 貴志 院長

二日目最初のプレゼンテーションは顎関節症クリニックやまだ歯科 山田 貴志 院長よる「見逃がされがちな部位のトリガーポイント」です。

このプレゼンテーションでは、口腔内の筋肉のトリガーポイントに対する治療が全身の痛みを緩和する事例が紹介されました。

具体的には、口腔内から外側翼突筋への筋膜間注入法を行う方法や、その結果、全身の痛みが緩和された事例が多数ある事が紹介されました。

real anatomy trainの評価方法の提案 – 、漢方とFasciaの関係 –
弘前大学 小林 只 先生

弘前大学 小林 只 先生

弘前大学 小林 只 先生

続く発表は、弘前大学 小林 只 先生による『real anatomy trainの評価方法の提案』および『漢方とFasciaの関係』です。

前半では、近年注目されている anatomy trainの概念を説明し、「実際の患者さん」のFasciaの全身の繋がりを評価する手法(オステオパシーの手法と運動器学的な評価方法の融合)としての紹介・実技(四肢の牽引など)がありました。

全身をそのまま評価できるこの方法は、「シンプルで簡単」・「早いこと 全身みるのに5分、一部位で1分程度」、「そのまま徒手刺激で治療もできること」、「患者にも全身の連鎖を実感してもらえること」、「ある部位のMPSの原因因子の探索に有用」、「生活の動作指導にも直結する評価が可能」などが特徴です。

後半は、漢方とFasciaの関係に関する考察と提案がされました。経筋とanatomy trainの類似性や、漢方の「証」は筋・軟部組織(MPS・Fasciaの連続性)から理解可能である可能性が提示され、頚部痛と腰痛を例(腹診のMPS解釈:spiral lineと胸脇苦満と柴胡剤、女性とlateral lineと慢性痛の関係など)にした評価方法と漢方処方の発表がされました。

ミオラブと鍼による美容 – 塩釜鍼灸治療室 渡邊 利恵 先生

塩釜鍼灸治療室 渡邊 利恵 先生

塩釜鍼灸治療室
渡邊 利恵 先生

続く発表は、塩釜鍼灸治療室 渡邊 利恵 先生による『ミオラブと鍼による美容』です。

この発表の中では、筋膜リリース器具MYORUB(ミオラブ)と鍼療法で咀嚼筋を施術することにより、顔の筋肉を引き締める手法の説明がありました。

また、プレゼンテーションの後には実際に被験者に対して、MYORUB(ミオラブ)と鍼療法で顔の筋肉を引き締める実技が紹介されました。

座位における筋緊張の連鎖に関して – 塩釜鍼灸治療室 鳥居諭院長

塩釜鍼灸治療室 鳥居諭院長

塩釜鍼灸治療室 鳥居諭院長

最後の発表は、塩釜鍼灸治療室 鳥居諭院長による『座位における筋緊張の連鎖に関して』です。

この発表の中では長時間の座位が筋肉にどのような悪影響与えるかの説明がありました。

また、後半は会員を被験者に対して、筋膜リリース器具MYORUB(ミオラブ)と鍼療法を用いて、座位により硬くなった腰部の筋肉をリリースする実技が行われました。

総括

今回の学術集会では、前回に引き続き、注射療法、鍼療法、徒手療法、理学療法など様々な観点での実技を多く実施することにより、より効果的に罹患筋を迅速かつ正確に診断、治療できるようになるという目的が達成できたと考えています。

今後も本研究会を通して、今回のようにより深い情報交換を行うことにより、筋筋膜性疼痛症候群(MPS)のより詳細な原因、症状、治療方法の研究に寄与してゆく所存です。

運営にご協力をいただいた大正富山医薬品(株)様ソニックジャパン(株)様東芝メディカルシステムズ(株)様愛知電子工業(株)様東洋レヂン様を始めとする、全ての関係者の方々へ、この場を使い感謝の意を表させていただきます。

筋筋膜性疼痛症候群(MPS) 研究会では、今回のような学術集会を始めとする場で痛み、筋筋膜性疼痛症候群に対する理解を深め、治療技術の発展の為、ともに研究を行う治療者、研究者を募集しています。詳細は入会についてを参照願います。

なお、本学術集会の内容は、会員は会員コミュニティページより動画で視聴できます。