MPS研究会 第16回学術集会 報告

筋膜性疼痛症候群(MPS) 研究会では2015年11月15日 日曜日に京都 烏丸にて第16回 学術集会を開催しました。

今回の学術集会では、メインテーマを『解剖・動き・エコーによる技術の標準化と発展』として、過去のテーマを包括し、鍼、注射、手技などの技術を標準化させ、解剖学を共通言語に誰もが日常診療に活かせる内容としました。

世話人 よしむら鍼灸治療院 吉村 亮次 先生

世話人 よしむら鍼灸治療院
吉村 亮次 先生

開会の挨拶 木村ペインクリニック 木村裕明 院長

開会の挨拶 木村ペインクリニック
木村裕明 院長

MPS総括 – 弘前大学医学部附属病院 総合診療部, 金沢大学機能解剖学分野 小林 只 先生

弘前大学医学部附属病院 総合診療部, 金沢大学機能解剖学分野 小林 只 先生

弘前大学医学部附属病院 総合診療部
金沢大学機能解剖学分野 小林 只 先生

最初のセションは当会役員・弘前大学医学部附属病院 総合診療部, 金沢大学機能解剖学分野 小林 只 先生から、MPSに関する総括が行われました。

この中では慢性疼痛の歴史、過去に想定された慢性疼痛の原因、最新の研究状況、治療方法など、MPSに関して過去から現在、そして未来までの状況が総括されました。

エコー勉強会

よしむら鍼灸治療院 院長 吉村 亮次 先生

よしむら鍼灸治療院
院長 吉村 亮次 先生

今回のエコー勉強会では前半に『気胸のスクリーンニング』、後半に「肩関節周囲軟部組織の動的評価」と題して、よしむら鍼灸治療院 院長 吉村 亮次 先生よりプレゼンテーションがありました。

具体的には、エコーによる鍼と胸膜の位置関係の見分け方、肩甲下筋・三角筋・烏口上腕靭帯の動的評価、エコーガイド下鍼治療手技のコツなどの説明がありました。

実習の様子

実習の様子

その後、会場内で3グループに分かれ、吉村先生に加え、トリガーポイント治療院 院長 黒沢 理人先生、みね鍼灸院 院長 峰 真人先生を講師として、実際にエコーハンズオンが行われました。

ランチョンセミナー

今回は初の試みとして、お昼の時間を使いランチョンセミナーを開催しました。

療法士が使える刺さない鍼『ソマセプト』 –
向山デイサービス、東北大学大学院歯学研究科 理学療法士 山崎 瞬 先生

向山デイサービス 山崎 瞬 先生

向山デイサービス、東北大学大学院歯学研究科 理学療法士 山崎 瞬 先生

最初のプレゼンテーションは向山デイサービス、東北大学大学院歯学研究科 理学療法士 山崎 瞬 先生による「療法士が使える刺さない鍼『ソマセプト』」です。

このプレゼンテーションでは、医療機関から地域・生活を支えるための理学療法士への社会からの期待に応えるための活動事例(療法士の技術を利用した自動車座席調整サービスなど)の紹介に続き、日本の療法士でも扱う事ができる鍼として、東洋レヂン社のソマセプトが疼痛緩和に大きな効果を上げていることの紹介がありました。途中で、参加者全員に配布されたソマセプト・ミオの体験(胸鎖乳突筋への貼付による頚部可動域の改善効果)が行われました。

離島診療所における整形内科 ー沖縄の歴史を踏まえてー –
地域医療振興協会 与那国町診療所 並木 宏文 先生

地域医療振興協会 与那国町診療所 並木 宏文 先生

地域医療振興協会 与那国町診療所
並木 宏文 先生

続くプレゼンテーションは地域医療振興協会 与那国町診療所 並木 宏文 先生による「離島診療所における整形内科 ー沖縄の歴史を踏まえてー」です。

このプレゼンテーションでは、与那国島の歴史から現在までの紹介、離島での医療の現状説明、地域医療における痛み治療の現状紹介などがありました。

その中で、東洋レヂン社のソマセプト・ミオは、患者の救急搬送時の乗り物酔いの予防、農作業・漁業時サポート、術後創部痛の緩和、MPSの治療など、医療機関内から地域全体で大きな効果を上げていることの紹介がありました。

シンポジウム

シンポジム

シンポジム

午後はシンポジウムからスタートです。このシンポジウムでは実際に腰、膝等に痛みを持つ会場の先生方に被験者になっていただき、初見の同一の被験者に対して複数の治療者が、問診の方法、羅患筋の特定、最適な治療方法の選択など実演し、議論しました。

また、コメンテーターとして弘前大学 小林只 先生と株式会社ゼニタ 代表取締役 銭田良博先生が、職種共通の評価方法とその考え方を、今回の学術集会のテーマである「解剖、動き、エコー」の視点から議論しました。

シンポジム

シンポジム

MPS・仙腸関節性・椎間板性などの腰痛症の病態のオーバーラップとその融合した治療戦略、エコーによる局所療法の適応自体の評価、局所症状を悪化させる全身のバランス・アライメント(腰部可動域と顎関節の関係など)など、MPSだけに留まらない領域・職種横断的な議論が行われ、非常に盛り上がったシンポジウムとなりました。

基調講演:観察研究から推測するTP像 – 関西医療大学 教授 黒岩 共一 先生

 関西医療大学 教授 黒岩 共一 先生

関西医療大学 教授 黒岩 共一 先生

第16回学術集会の締めくくりは関西医療大学 教授 黒岩 共一 先生の基調講演「観察研究から推測するTP像」です。

黒岩先生は日本におけるトリガーポイント研究の第一人者として知られており、トリガーポイントの研究団体 トリガーポイント研究会の会長です。

以前より講演をお願いしておりましたが、中々都合がつかず、今回初めて講演が実現しました。

質疑応答

質疑応答

今回の基調講演では、トリガーポイントに鍼や指が当たった時に感じる感覚を元に、トリガーポイントの実体が何か?という考察やトリガーポイントと慢性疼痛の関係の考察など、非常に興味深い内容についての説明があり、参加者は深く聞き入っていました。

総括

今回の学術集会では、メインテーマ『解剖・動き・エコーによる技術の標準化と発展』の通り、鍼、注射、手技などの技術を標準化させ、解剖学を共通言語に誰もが日常診療に活かせる内容なりました。

今後も本研究会を通して、今回のようにより深い情報交換を行うことにより、筋膜性疼痛症候群(MPS)のより詳細な原因、症状、治療方法の研究に寄与してゆく所存です。

本学術集会の運営にご協力をいただいたソニックジャパン(株)様東芝メディカルシステムズ(株)様愛知電子工業(株)様東洋レヂン(株)様コニカミノルタヘルスケア(株)様MSKメディカルサポート(株)様を始めとする、全ての関係者の方々へ、この場を使い感謝の意を表させていただきます。

筋膜性疼痛症候群(MPS) 研究会では、今回のような学術集会を始めとする場で痛み、筋膜性疼痛症候群に対する理解を深め、治療技術の発展の為、ともに研究を行う治療者、研究者を募集しています。詳細は入会についてを参照願います。

なお、本学術集会の内容は、会員は会員コミュニティページより動画で視聴できます。